7月のFlyFishing
夏の釣 空知川のアメ鱒釣り 峠のくだりは晴れていた。小雨と靄に包まれた広い大地を抜けだして、少しだけ蒸した匂いのする夏の川へ立ち寄った。考えてみればこの川へくるのも、もう3回目。そろそろ一人でも釣ができるくらいに、引き出しも増えてきた筈なのだが、なぜかこの川へはこの人とくることが多い(笑)
さっきまでの低くて黒く重い雲と雷鳴がまるで嘘のように青い空が川面を照らしている。下流のプールへ向かう彼に背を向けて、どんどん上流へと釣上がる。ポイントなどはお構いなしにフライをキャストしては足を運んでゆく。思いもかけないところから小さな飛翔が上がって、ロッドが震える。テンポの良いジャンプでそれが虹鱒だと判った。
リリースをして、さらに釣り上がる。岩盤質の荒瀬は棄て、岩盤と砂の岸際を歩いて、開けたプールへ出た。左前方から太い流れが入ってきて、岩盤で適度のヨレを形成している。一番太い流れの瀬尻へフライを落した。フライはゆっくり流れては大きな弧を描いて水に飲み込まれる。右足を一歩踏み込んで1本奥の筋を流した。大きな鱒が岩盤の切れ目の黒い部分からゆっくりと出てきて、小さなアクションでフライをくわえこんだ。ゆっくりと、そしてしっかりとロッドを上げてフッキングさせた。 大きな鱒は筋をまたいで走ってゆく。左手からラインが出てゆく。余裕のあったラインがなくなって、リールの悲鳴が聞こえた。その鱒は下っていった先で大きくジャンプをした。控えめな赤い色が水へと落ちてゆく。数度のジャンプとリールの音が重なって、夏ゼミの音も消えてゆく。静かなゆっくりとした時間が過ぎてゆく。どこか気持ちが良かった。ランディングにも不思議と気負いがないのか、鱒はすんなりとネットへ入ってきた。再び夏ゼミの合唱が始まった。
大きな流れは瀬を迎えて、川全体があわただしくなった。フライを打つポイントもより鮮明で、迷いはなかった。必ずと言って良いほどに鱒は反応してきた。おそらく今日は僕が最初の侵略者なのだろう。アメマス、虹鱒、イワナ。どれもまるで教科書のような出方と着き方をしていた。川はこうでなくてはいけないと言う見本のようでもあった。それもまたうれしかった。
橋が見えている。今日の釣はこの橋を境に戻り、釣り残してきた対岸側を釣り降る。やはり降りも瀬を流してゆくと鱒が反応する。左の岩盤の落ち込みから少し離れたところに小さなライズを見つけた。ウェットフライを14番のEHCに変えた。ハックルがなくボディ全体で浮くこのフライはこの川の僕の定番。鏡のようになった部分にフライを落し、ロッドワークでひときわ黒く淀んだ部分へフライを滑らせる。黒い水全体が盛り上がって、フライを飲み込んだ。だが一瞬早かった。僅かなグッと言うて応えだけを残してフライは宙に舞った。鱒はもう出ることはないだろう。目を上げると仲間の姿があった。携帯で短く会話をした。仲間は足元部分から釣りはじめた。 この川へきたならこのポイントは外せない、と言う流れがある。ユッタリとした流れの奥の木下にその鱒はいつもいる。崩れ欠けた穴と流れが作る彼の要塞とでもいうのだろうか。過去にも何度か攻めているが、そのつど沈黙で僕を追い返す。このポイントを得意としている仲間もさすがに今日だけはココに見切りをつけてて上流へと向かったようだ。
何時もと違うアプローチを試みた。下流側をしっかりと釣りきって、立ち込むポイントを作った。流れを跨いでのアップクロスかサイドクロス、ダウンクロスと言うのが何時もの攻め方だ。だが今日は完全に下流側から流す。全くのドラグフリーだ。定期的なライズが数箇所で起こる。何を食べているのか特定が出来ないほど小さな虫が飛び交っている。16番・・18番・・20番白く小さなサイズを流しても大きな鱒はおろか小さな鱒も反応しなかった。
頭を悩ます事実は鱒が確かに見切っているということ。フライを見切っているのではなくてフライフィッシングを見切っている、そんな感じがした。キャストする時間よりもフライを探す時間が増えて行く。最後に浮かべた黒いボディのハンピーに反応したのは狙いの鱒よりも少し上にいた小さな岩魚だった。静かにラインをリールへと戻して、このポイントをあとにした。早い話が今日も惨敗したのである。
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