11月のFlyFishing
所々凍りついた水溜りのある道を進んでゆくと川へ出る。昨晩の風はまるで嵐のようにこの道を駆け抜けたのだろうか、冬枯れした木々の枝が硬くしまった道路に散乱している。タイヤが枝を踏む音はかすかだが泣き声のようにも聞き取れる。開けた河原のその奥の流れには、たくさんの落ち葉が音もなく流されてゆく。キャストされたラインの先のフライがかすかな反応を見せるたびに、ラインを大きく振って枯葉を飛ばす。ブンブンと響く音はどうにも耳障りで、鱒からのコンタクトを妨げているようにも思えて、朝のやる気は少しずつ失せていった。それでも溜りにいる鱒は沈んでいる枯葉を避けて、しっかりとフライを咥えてくれる。いつもよりは弱々しく痩せて見えるのは、敷き詰められた枯葉とどこか部分的に同化しているからだろうか。
早々とこの川での釣りを諦めて移動することにした。道東のこの周辺には有名なアメマス河川が何本かある。釧路川、阿寒川、茶路川、音別川・・・よく聞く名前だが、私が時々釣りに行く川は音別川と茶路川だと言うことは、このサイトを見ている方には周知のことだろう。共に河口から上流まで、ネイティブアメマスが海から遡上して産卵をして再び海へ降ってゆく。命のサイクルがしっかりと上から下まで繋がっている川だ。 そして今回は第三の川と私が思っていた庶路川へ向かった。この一帯の海岸線を共有している川である以上、当然アメマスの遡上はあるだろうと思ってはいても、上流にダム湖があって”虹鱒が釣れる”と言う情報ばかりで、アメマスの話題はあまり聞こえてはこなかった。またダム湖のある河川はどうにも川底の泥が気になって釣をする気分になれない、と言うのが本音でもあるのだが、今回”とある方”よりこの川のアメマスも良いですよ、との情報を頂いていたこともあり、寄ってみることにしたのだ。
国道から市街地を抜けて何本かの橋で車を止めてみた。流れ自体はこの周辺の川とそう大きな違いはない。そこかしこに護岸が多いが、アメマスのポイントと思しき流れもたくさんあった。釣に割ける時間は3時間ほどなので、中庶路から上庶路までの区間で、車からそう離れていないポイントを見つけて川へ降りた。雰囲気の良い瀬があって、奥にはブロックが沈んでいる岩盤の淵がある。6番ロッドで瀬から釣り降ったが、瀬からは鱒の反応はなくて、本命視されるブロック際ではかすかなバイトがあった。どうやら鱒はいるようだが、この時期のアメマス特有のギラッと光る動きは見られない。沈んでいる岩と岩盤に入り込んでいるのだろうか。
ウェットからルースニングに切り替えて、岩盤の黒い溝の部分を流した。インジケータはすぐに大きく反応して、一気に沈んだ。40半場の初めての庶路川のアメマスが釣れた。尾鰭が真っ赤に染まっている個体は久しぶりに見る。時折背後から強い風が吹くなか、10本足らずのアメマスと遊んだ。最大は50弱のもので頭の割には体は痩せていたが、流れの中から出てくるアメマスは手強くて楽しいものだ。この鱒も尾鰭は桃赤に染まっていてとてもインパクトがあった。初めての川ではあるが、道東を流れるアメマスのいる川はどこも同じ匂いがして何とも心が落ち着くものだと感じた。逆行となった黒い森の隙間から日が射している。空はまだ青かったが、今日の釣を終わらせる時間がきたのだと思った。
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