11月のFlyFishing
宿を出ると、強烈な寒さに身震いした。「今年は雪が遅いですよねぇ」昨晩入った炉端の主人がそういっていたとおり、釧路の町には雪がないのだが、刺すような寒さはまともな釧路の冬がやってきた証でもある。寒さで重い音を奏でるエンジンを目覚めさせて薄暗い国道を東へ走る。年に幾度も走るこの道の両側は少し色の抜けた金色のススキと葦原があって、時折同じ色をした蝦夷鹿が草を食んでいる。道に付いた黒いスリップ痕は、蝦夷鹿を避けての急ブレーキの痕なのだ。
空がうっすらと赤く染まりだす。ヘッドライトに映し出された黒い森の上から光が降りて、ゆっくりと東の沼は目覚める。河口を見て、海と沼が水路で繋がっているかどうかを確認する。この場所で釣をする上で、満たしていて欲しい条件でもあるのだ。残念なことに、繋がっていると言えるほどではないが、なんとなく流れだけはありそうだ。しかし、今回の敵はこの風だろう。7m/秒位はありそうだ。南西から強烈に吹いている風では、キャスト範囲も限られてくる。ともかく朝一が勝負と見た。
波立つ水面にフローティングでは厳しいのかもしれないが、かなり浅くなった水深を考えればベターな選択だろう。ロールを一回打って右斜めへキャスト。カウントダウンは20。どうにも風が強いときはリトリーブスピードが速くなってしまうのが私の欠点だ。どんな条件でも同じようなパターンをトレースしたいものである。そんなことを考えていると重い感触が違和感となって指先から腕に広がってゆく。リフトするロッドのティップが大きく絞り込まれた。なかなかのサイズである。フックがしっかりかかっていることを確認してからラインをリールに巻き込んだ。頬に当たる風を感じながら鱒のファイトを楽しんでいるなんて、やはり贅沢かなぁ。そして青い空を流れる雲の動きまで見る余裕があるなんて(笑)
サイズは62cm、丸々と太ったアメマスは降ってきて飽食した個体なのだろうか、それとも遅ればせながらの遡上ものなのだろうか。メスで鰭に欠損がないところを見ると遡上したものなのかも知れない。写真に収めてリリースした。きっと今日はこれが一番の大物のだろう、そう思うと次からのキャストに力みがなくなった。不思議と力みのないキャストやラインには鱒はかかりやすい。しばらくは良い感じで鱒が釣れた。全体に今回のコンディションは良い。小型のサイズも丸々と太ったものが多く、その殆どはまるで海の色をまとっているようだった。
釣りに疲労感を感じ出した頃に西からの風がかなり強くなって、キャストが背中を叩くようになった。今日の釣はココまでだ。西へ向かう白鳥の群れの泣き声が澄んだ空気に響いている。 |