Episode ShortStory・・ For Fishermen of Rainy Day

 

釣り場は話題の宝庫・・・短編集その2


残暑お見舞い申し上げます


今年は本当に残暑が厳しかった。いつもは1年に2、3週間しか使うことのない高価なゴアテックスのウェーダー、今年は「元を取った」記念すべき年になったくらい。しかし肝心の釣りは今一歩の日が続き、「早く涼しくならないかなぁ」などとビール腹の成分を補給する毎日が続く。

昨年良い思いをした道南の渓流もきっと大した事はないだろうな、などと思うのだがやることがないのでついつい足が向いてしまう。晩のビールが効いて遅く起きたので、川に着いたのは3時を少し回っていた。「イブニング狙いにはちょうど良いな」。幸いにも天気はうす曇り、涼しさも漂う。ゴアのウェーダーを履いて、腰には鉈をつける、この川の上流には「親爺」がいる。駐車したところからイブニングの堰堤までは3時間。その間に小さな堰堤が2つある。

ポイントでは小さなヤマメと岩魚が交互に出て楽しませてくれるが、はやり大物はいない。最初の堰堤では25cmほどの岩魚がエルクヘアーに出て一安心。何だか今日はペースが悪い。2つ目の堰堤。ここでは期待された大物は釣れず最後のイブニング狙いへ向かう。薄暗くなった土手を登りいったん道路へ出てコンクリートの階段を下って堰堤の上に出る。寒気を覚えるくらいの冷たい風が頬を撫でた。背中がゾクッとしたが、昨年釣れた泣き尺の岩魚を思い出しティペットを交換し始めた。よしキャスト。

「釣れますか?」渇いた声に振り向くと麦藁帽子に白いランニング姿の若い男が立っている。手には竹の1本竿。人がいたのか・・ドキッとしながらもいくら暑くてもそのカッコはないだろ、そんなことを考えていると、バシャ。音に振り返ると土手際の柳の下に大きな波紋が広がっている。「すいません」と言いつつ12番のエルクヘアーをキャストする。土手際を静かに流れたフライはライズの場所より遥か先で消えた。手に伝わる感触は小型の岩魚だった。手元に引き寄せリリース後、苦笑いで後ろを振り向くとそこには誰もいなかった。

帰ったのか、気を取り直してもう一度キャストする。しかし不思議だ・・自分が堰堤に立って5分もしないうちに人がきて去っていった・・大体後ろに人が来たら気づくよなぁ。さっと血の気が引いていく。彼が立っていた場所は堰堤の上、つまり空中ではないか。体が凍りつく。震える手で首から下げた熊よけのホイッスルを思い切り吹いた、音が出ない、あせっている、もう一度吹いた。「ピューッピッピュー」なんとも間抜けな音が渓にこだまする。

「熊かぁ!」その声は堰堤の下から聞こえてきた。何?ナニ、なに、人がいる?堰堤から下を見ると先ほどの男がずぶ濡れで立っている。「どうしたんですか?」と聞くと「あんたのラインが飛んできて、避けようと思ったら足を滑らせて落ちたんだよ」かなりご立腹のようで私をにらんでいる。堰堤下へ行きオバケだと思った話をすると、「こんなカッコの良いオバケがいるかよ」といって彼は笑った。

こんな情けない私は今日も堰堤へ通っている、熊避けホイッスルを持って。皆さんもドキッとしたことあるでしょう?


孤独な釣り人


しかしこれだけ鱒がいるのに釣り人がいない釣り場も珍しいよね」
「とか何とか云っているとほれっ!また釣れた!」
「おおっこれは大きいよ!60アップかもね」
「しかしココは穴場だよね、まったく」
「あれっ!?ばれた、まぁ良いか、これだけ居るんだし、人は居ないしね。」

「あ〜ぁ腹減った、そう言えばパンしか食っていないし、後一つ釣ったら飯だな!」
「とか何とか言うと釣れなくなるんだヨなぁ-、これが」
「でも釣れる!これが魅力だよね、ここの」「アッレーばれた!」

「オッカシイなァ〜、フックが開いたのかなぁ。」
まぁ良いさ、こういう時はフライを変えろ!という時なんだよね」
「という所で5Xに変えよう!」
「しかしこのリールはいいねぇ!」「色が良いしね、結構ドラグもきくしね」
「問題は値段だな、だいたいねフライの道具って何で高いんだろ!、ったく」

・・・・・・・「しかし腹減ったな、何食うかな」
「釣りながら食えて、腹いっぱいになるドリンクなんか出来ないかね、まったく」
「よし!今日はこのくらいにしてやるか、とか何とか言いながら粘るんだよね」

・・・・・・・・・・・・・・

これは私の独り言・・・釣り人ってやっぱり孤独が好きなんだよね・・・・って言うより黙って釣れよ。

もし皆さんこれに思い当たる節があったらあなたも充分釣りドランカーですね。


バレちゃってさぁ


支笏湖でアメマスを狙いに行たときのこと。
先に来ていた結構年配のフライマン。
「どうですか?」とお決まりの挨拶をすると
「いやー渋いね、ちょっと前にさ、50オーバー立て続けにばらしちゃってね。4本、参ったよ。」
「ライン巻き込んでるうちにはずれてさぁ」とテレもなく言う。

でも本当に照れて参っているのは私。
なんて答えれば良いのだろうか。私には今までばらしたサイズが50だとか60だとか分かったと言う経験が無いので「それはすごいですね」とでも言っておこうと考えていると
「虹だけどさ、結構引いたよ、参ったなぁー。」

ばらした鱒が虹鱒だと分かるにはどのくらいの経験が必要なのだろうか。もしかすると魚体判別センサー付きフライラインをこの人は持っているのだろうか?

そんな事を考えているとツイツイ自分の世界に浸りこんでしまう私、結局返事ができなくなってしまった。愛想の無い奴だと思われたでしょうね。

クソッ〜今の大きかったなー。なんて事ありますよね。あと少しで取り込む寸前まできたのにばれちゃう。魚体まで見えて大きかったりすると結構緊張するんだよね。

自分の話だと思われた人、サイズや魚種判別センサー付きロッド、ラインお持ちでしたら譲ってください。ちなみに釣り仲間の「ひげねこ」サンは阿寒で80オーバーをばらしたそうです。そう彼は振動感知型ヒットセンサー付き魚種判別リールを持っていると言っていました。


21世紀のフライシステム


手塚治虫氏の考えた21世紀にはほど遠いものの、確かに未来の足音は迫っています。私たちが使うフライの道具やマテリアルにもハイテク技術は応用されていますね。しかしいくら進化はしても川などの自然はありのままであって欲しいですね。

NHCのアナウンサー:いよいよ阿寒湖にもアメマス制御システムが導入される事になりました。ご存知のように、このシステムは先ごろ支笏湖にも導入されて話題になった河原アクションプログラムを採用したコンピュータによる自動のアメマス誘導システムです。釣り人が釣り場ゲートを通る事で人数やタックル、技術レベルを自動的に判別して、釣り人が適度に楽しめるようにアメマスを誘導するものです。鱒全体のバランスが悪い支笏湖と違い「よりナチュラルな感覚」で釣が堪能できるのが今回の阿寒湖ウヒャウヒャシステムです。今回は特別にこのシステムの生みの親、河原システムの代表マススキ・トラウッタさんに来ていただきました。トラウッタさんこのシステムによってどのような良い事が我々釣り人に怒るのでしょう・・いや起こり得るのでしょう。

トラウッタ:イヤーホンとですね、誰でも均等に釣りが出来て鱒がつれる、サイズまで喧嘩無いように同じサイズ。みんな平等これが一番ね。このシステムだと20年のベテランも初めて3日の人もアメマスがバンバン釣れちゃうルアーもフライも関係なし。みんなが幸せになると言えるでしょうね、フン。

NHCのアナウンサー:やはりみんなが同じだと喧嘩もなく幸せなのでしょうかね?なんとなくつまらなくて釣りする人が減るのではないでしょうか。

トラウッタ:イヤーまさにその通り。このシステムの狙いもそこにあるのですね。この時代に天然の鱒を努力して工夫して釣る、そんな馬鹿げたことに力を注ぐくらいなら、仕事でもしろ、たまには子育てしてみろよ、馬鹿おやじと言う家庭の奥さんからの提案によって生まれたのがこのシステムですからね。バーチャルなシアターホームフィシングで満足できなくて、コスモ公園の阿寒湖や支笏湖で釣りをする無法者が増えて来た事も政府を動かした要因でしょうね。

NHCのアナウンサー:という事は政府代表のマキコナカタの次期選挙をにらんだ主婦向けのパフォーマンスとも言えるのでしょうか。シアターホームフィッシングの人口が5億を突破し法を破って自然河川への乱入する男性、通称「だんな」へのご機嫌取りもしたいのが今の政府ですからね。政府と言えどもこんなに簡単に公園法を変えて釣堀にしても良いのでしょうか?

トラウッタ:イヤーほんと、なんでもありですね今の政府は。それにしても主婦パワーはすごいですね、野球界やサッカーの主婦選手率も80%を超える勢いですからね。だんなはもはや釣くらいしかすることが無くなった、地球のゴミとも言えますね。ところでアナウンサーさんも趣味は「コレですか?」

NHCのアナウンサー:イヤーほんと(移ってしまいました)恥ずかしい話ですが釣りですね、やっぱり。先週フライシステム21を手に入れたのですよ。
トラウッタ:あれは良いですね、ワンキャスト200mで沈下制御ラインシステム、声紋判別巻き上げリール付ですね。でもグリップが家族画像か政府画像の選択しか出来ないのはいけませんね。これも政府と主婦のアイディアですね。しかし政府が選挙で大敗した場合に備えて、モー娘画像と藤原紀香お宝画像も用意されていると言う噂です。
NHCのアナウンサー:それはうれしいニュースですね。肝心のアメマスですがセンサーを埋め込んでいるのに天然と言うのは正しいのでしょうか?

トラウッタ:イヤーほんと、よく気がつきましたね基本的にはウグイにアメマスボディを映しこんだだけの着ぐるみアメマスのほうが多いのですが。中には天然物もいますが釣って面白いのは改良された前出のアメウグ21ですね成長は5倍体でボディーカラーが4色です。

NHCのアナウンサー:それでは本日はここまでですが、トラウッタさん何かありますか最後に。

トラウッタ:イヤーほんと、皆さん体に気をつけて楽しい釣りを、アメウグ21はReleaseのときはウグイに戻してくださいねそれではバイバイキーン!

こんな未来は必要ないですね、いつまでも今の環境が維持できますように。


ピッチャーとリリーフ


密かな楽しみとしている道東の小さな川でアメマス釣をしていた時のこと。
日が高くなって一段落、御握りを頬張っていると投げ釣でもするのかと思えるほどの長いルアー竿を持った親爺が現れた。

「こんにちは」と言おうとしたが、お握りが喉に詰まってむせた。「・・・・・」
「釣れたか?」と聞いてきたので、相変わらずの「ボチボチです」と答えるつもりが「ボロボロです」と言ってしまった。
タバコに火をつけ隣に座り込んだ親爺はまじまじと私のロッドを見て
「フライか!」と言うので「そうだ」とうなづいた。
「俺もふらいはよく使う」と言う・・・いやあんたのはルアーだろう、餌かもしれんし。

ごそごそと胸のポケットから出してきたのはかなり大きなサーモンフライくらいはあるオリーブのウーリーだった。確かにこれはフライだが、まさかこのロッドに?と思っていると大きなガン球をつけてその下にティペット・・道糸をつけてウーリーを結んだ。

確かにフライの仕組みだが何故ドロッパーの先にイクラを付ける?
「こうすると匂いが出てよく釣れるんだ・・・今年は鱒も大きいから楽しみだなぁ」と言う。
確かに今年はアベレージが大きい。
「そうですね、いつもよりは大きい気がしますね」と答える。
「ピッチャーリリーフのおかげだ」・・・「鱒も増えて大きくなるしな」・・・・
はてっ?昨日は確かに6回で上原にリリーフが出たが、何か関係あるのかな?。
「キャッチャーリリーフだったか?、なぁあんたもそう思うだろ」・・・・・
阿部にもリリーフがでたっけ?でもキャッチャーにリリーフとは言わないだろ。
もしや!と思っていると「おおたの親爺はだめだわ、こないだも釣ったアメマス20本全部持って帰って自分と犬の餌にしおる、あんな事していたらアメマスなんてすぐにいなくなってしまう」と言葉とタバコを水面に吐き捨てた。
「オイオイ、タバコは捨てちゃ駄目だろ」と言う前に
「俺たちの仲間はみんなキャッチャーリリーフだ」と続けた。
キャッチアンドリリースのことだと気がついた。
「おじさん、よく知っていますね!キャッチアンドリリース」少し尊敬の目で言い返した。
「それそれっ!それよぉ〜、キャッチャー アン リリーフ」よく見ると前歯が無い、息が漏れるのか。
「こないだもよぉ氷が落ちてすぐに来たんだけんど半日で片手は釣ったわなぁ、まぁ30はいつものように海でアブラコ釣に使うから持って帰ったけどよ20はリリーフしたさぁ」と自慢げに言う。
頭全体がガクッと落ちた。それは「おおたの親爺よりひどいでしょ」心の声はむなしくそう叫んだ。


言葉だけが先行するキャッチアンドリリース。正しい方法が実践されてはじめて効果がでると言うことを再確認しましょう。

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